朽ちゆく窮屈な島にて【Test Drive Unlimited Solar Crown】

2024年12月10日火曜日

Bad PC レースゲーム 感想

t f B! P L

Test Drive Unlimited Solar Crown(以下 TDUSC)は 2024年9月にリリースされたオープンワールドのMMOドライビングシミュレーター。

WRC シリーズを手掛けていた KT Racing (Kylotonn) が開発、 Nacon がパブリッシングしている。

この Test Drive Unlimited シリーズ(以下 TDU)は、Test Drive シリーズの中でも特に根強い支持のあった作品群で、本作は 13 年ぶりのシリーズ新作である。

実寸大で再構築された実在のリゾート島を舞台に、有名ブランドの車両で自由にドライブできるオープンワールド形式を採用しており、仕事やレースで収入を得たり、ファッションを楽しんだり、別荘となる物件を購入してガレージに車を並べたり、と、カーライフを疑似体験できる点が特徴的であった。

オンラインプレイにも対応しており、仲間とツーリングをしたり、ミーティングと称して互いの愛車を見せ合うといった遊びも魅力の一つとなっていた。

初代ではハワイのオアフ島を舞台とし、2作目では地中海に浮かぶスペインのイビサ島(とオアフ島)が舞台となっていたのだが、本作では鴨リ洲を含んだ香港島全域が舞台となっている。

フェラーリやランボルギーニ等の 30 ほどの有名ブランドから100モデル以上が収録。すべて内装まで再現されているため、コックピット視点で実車のように運転を楽しめるようになっている。

本作にストーリーと言えるものは殆どなく、強いて言えば招待制イベント Solar Crown に参加し、自動車を介した社交界にて名声を高めていくことが軸となっている。


本作は80時間程度プレイ。
メインゲームの進行に関わるランクを上限の60まで上げ、収集物はすべて回収済み。


窮屈な香港島

Steam 等の評価やレビューを見てもらえれば一目瞭然ではあるのだが、問題点だらけであり、私個人としても全くもっておすすめできない。セールでも買うべきものではないと思う。
一度 Steam のレビューをするにあたって、十分と言えるだけのプレイ実績を達成して以降は即刻アンインストールしたほどである。
(レビューはこちら

そんな本作は端的に「至極窮屈なゲーム」と表現できる、と私は思う。

今回ゲーム向けにリファインされた香港島の面積はおよそ 80 k㎡。
Need for Speed: Unbound のレイクショア (推定 50~60 k㎡ 程度 [1] )と比べると広く、Forza Horizon 5 のメキシコ (100 k㎡ 超 [2] [3]  ) などと比べると一回り小さい。
The Crew: Motorfest のオアフ島(推定 200 k㎡ [4] )と比べるとかなりコンパクトだ。

実寸の 1:1 スケールであった TDU 過去作品の舞台と比較すると、TDU のオアフ島は約 1,500 km²、TDU2 のイビサ島は約 570 km² であり、本作の香港島は非常に小さいことがわかる。

と、マップが小さい事が根源であるように見えるが、プレイして感じる窮屈さと比べたら誤差程度であるように思う。
もちろん要因の一つにはなるだろうが、スケールの小ささはそこまでクリティカルに作用しているわけではない。

他作品と比べるとかなりこじんまりとしている印象が強いが、再構築された香港島は総延長で約600㎞程度の道が細かく張り巡らされている。
これらを縫うようにドライブする分には、私としては(現行の同系統の作品と比べたら)香港島自体は数字ほどには狭さを感じにくかった。
そういった意味でもマップ自体がクリティカルになっているわけではないと思っている。

再現された香港。都市部は網目状に細かく道が走り、山間部は未舗装の山道が伸びている。

では、この窮屈さはどこから湧き出たものなのか。

その答えは本作のゲームシステムが抱える多くの問題点に潜んでいる。

問題点

大抵のゲームには大小さまざまな問題点がいくつも存在しており、それは名作や傑作と称されるタイトルであっても例外ではない。
しかしながら本作では、その量もさることながら、悪質さも群を抜いており、結果として悲劇的なプレイフィールを生み出してしまっている。

そんな問題点の数々を一部分だけあげていこう。あくまで一部分である。

# イベント種別

運び屋や送迎といったジョブミッションがあった旧作と異なり、本作でのゲーム内のイベントは殆どが形式が異なるだけのレースであり、敵 CPU や他プレイヤーとの競争を余儀なくされる。
タイムアタックイベントもあることにはあるのだが、圧倒的にレース系統のイベントの比率が多い。

# 報酬システム

イベントクリア時にもらえる報酬額が 15000 クレジットで特定のイベントを除けば設定額は一律である。ボーナス等でやや増額されることはあるが、それでも2~3倍の範囲に収まる。
進行に影響する名声ランクを上昇させる経験値も一律で、必要経験値が増える後半になれば1レースで貰える量は雀の涙程度にしかならない。
また、同一イベントを複数回短時間でプレイすると報酬額が減額されるシステムになっており、クールタイムも長めに設定されているのもあり、イベントを用いた金策やグラインドは困難である。


通常イベントは軒並みこの金額

40分弱ほど拘束されるイベントでも高々22万

他の手段もあることにはある。

タスクと呼ばれるミッションがあり、達成するとボーナスとして経験値やクレジットが貰えるものの、クリア時にタスクは消滅するため1度限りである。
また、クリア条件にイベントでの上位フィニッシュや高額な車両の購入が前提となっていることも多い。
進行する上では頼らざるを得ないものの、タスク単体では十分なリワードは得られない。

FRIMと呼ばれる危険運転を連続して行うことで蓄積されるボーナスがあり、それを用いると1日でクレジットを最大 100 万入手できるものの、ある程度精密な操作が要求されるほか、セットアップもだいたい決まっており、最適な車両も後半の高額なハイパワーマシンがほとんど。


後半にもなると車両価格は100万~1000万オーダーが当たり前となっており、進行上必要な車もその中に含まれている

あとは、マップの未踏破道路を埋めることで 1% ごとに経験値がボーナスで得られる仕組みもある。
序盤こそ進行を大いに助けるほどの経験値を頻繁に得られるものの、必要経験値が多くなる終盤ではわずかに足しになる程度でしかない。

# 難易度調整ができない

本作の敵 CPU のレベルは、Forza Horizon のようにユーザ側で調整ができない。
直近のプレイヤーのレース成績によって勝手に決定されるため、プレイヤーの意図と関係なく、最上位の敵 CPU と戦う状況となり得る。

# 敵 CPU の AI

敵 CPU の AI に関しては調整がまともに行われていない。
特に最上位レベルの AI あたりはストレスを生むキッカケにもなっていて、いたるところで非難の的となっている。

実際のところ、最上位の CPU は内部の定量的な指標を基にほぼ理論値に近い速度で旋回していく為、上位クラスの車両では人力でとても再現できるようなものになっておらず、ある程度距離が離れてしまうと、CPU に一切ミスする余地が無くなり、二度と追いつけなくなるということもしばしば起こる。

これについては Nacon 公式チャンネルでの vlog [5] にて、開発チーム側に調整能力がないことを半ば自白しており、だらだらと言い訳を重ねる様に動画のコメント欄がしっかり燃えていたことも記憶に新しい。
元がフランス語の動画であり、vlog の英訳の質が悪く、意図がねじ曲がっているという話もあるが・・・


# カスタマイズ関連の使い勝手の悪さ

各車両はパフォーマンスパーツの交換が可能で、チューニングショップにてパーツを購入・装着できる仕組みとなっているのだが、購入済みのパーツを明示的に変更する為にはいちいち施設に足を運んで交換する必要がある。

イベントの準備画面に自動調整機能はあるのだが、どのパーツを装着するかどうかの選択はおろか把握すらできない。
そして細かなギア比等のセッティングについても、初期段階ではアクセス不可能であり、解禁後もかなり分かりづらい位置に秘匿されている。

# 車種

100台を超える車種を収録していると謳ってはいるものの、Audi R8 や Bugatti Veyron や Chiron 等の車種でのエディション違いが複数収録されている点や、どのゲームでも見かけるようなブランドばかりになってしまっている点で、車種の偏りや物足りなさを生んでしまっている。

一部では日本車が 370Z と 09年式 R35 GT-R しかない点も問題視されている。

車種の性能差

収録されている車両はデイリードライバー、クロスカントリー、グランドツアラー、スーパーカー、ハイパーカーという5つのカテゴリーに分けられているのだが、同一カテゴリー内での車両の性能差が非常に大きく、メタとなる車両が1、2台に限られてしまっていることも多い。




と、いくらか例を挙げさせてもらったが、これらはあくまで氷山の一角であることは改めて伝えておきたい。

破滅をもたらすシナジー

前章では本作が抱える数々の問題点を紹介したのだが、これらがそれぞれ複雑に絡み合って、大きな致命的問題を生じさせているのが現状である。

先の例の範囲で言えば…



基本ゲームの進行には経験値が必要で、これらはイベントをクリアすることで手に入れられるのだが、イベント種別は基本的にレースしかない

そして、順当に進めていると否応なしに敵 CPU のレベルは最高難易度になる
AI の調整不足により、適切な車両やセッティングを用意した上で、出だしで前に出てブロッキングし続けるか、強くぶつけてはじき出すといったダーティーな運転をするしか対抗手段がなくなってしまう。

車両については車種の少なさ性能差ゆえに、各カテゴリーで正解と言える車両は1, 2台程度しかなく、ひとたび購入する車を誤ると勝負にならないケースも多々ある。
1台あたりの価格が高騰する後半においては、選択を誤った段階で100万~1000万オーダーの負債にもなりかねず、本作の報酬の少なさも作用し、時間的にも心的にもコストが非常に大きくなる。

セッティング周りにも問題があった。
レースごとのレギュレーションにそった性能調整が必要となるのだが、パーツやセッティング切り替えのショートカットが存在してない
自動調整機能はレースする上では不適切な構成に変更されることも多く、最高難易度のCPUを相手にする際はいちいちショップでパーツの着脱せねばならない
サスペンションやギア比を微調整をしようにも、直接数値を触れるセッティング画面はメニューの深い部分に隠されており、よほど意識していないと存在にすら気づけないだろう。

いざ万全の状態でレースに挑んでも、ろくに調整されていない AI を相手にしているので、競り合って勝ったり、後から追いついて抜き去るといったケースはまずなく、スタート時にマシンの性能差で前に出て、そこからひたすら逃げる展開が殆どであり、序盤の些細な1ミスで逆転不可能になることも珍しくはない。
単純に勝ち方がワンパターンになりやすく、非常に退屈でフラストレーションを覚えやすい。

繰り返しになるが、そういった理不尽さや選択肢の乏しいレースを繰り返すしか基本的にやることもない上に、金策といって我慢できるような仕組みにもなっていない

経験値目当てで言えば、与えられているタスクをクリアすればよいのだが、後半ともなれば「特定のレースで3位以内」「特定のレースで1位」のように達成条件は容易ではなくなる他、新規で高級車を購入せねばならなくなることもあり、報酬システムが弱いにも関わらず元手となる大量のクレジットが必要になっている。




上記のように数々の問題点が互いに作用した結果、まともにゲームを進める上では「好きな車を買って好きに乗る」といった選択の自由は殆ど意味を為しておらず、ある程度順調に進行しようと思うと「マップ埋めとタスク埋めを優先し、必要な車両だけを買う」といったようなプレイスタイルを押し付けられる。
それに抗うと、イベントでの稼ぎやタスクのクリアが難しく、いずれクレジットも経験値も満足に溜まらない状況に陥り、同じような進捗状況のまま過ごす羽目になる。

本作はこういった最悪のシナジーがゲームシステム全体で発生しており、結果としてプレイヤーへ不自由さや閉塞感を与えている。これこそが本作の抱える窮屈さの正体ではなかろうか。

悲しいことに、前章で挙げた問題点が一部であったように、この例も本作の破綻の一部分でしかない。
ありとあらゆるボタンがかけ違えられ、歪につなぎ合わされた結果、本作のシステムが破断する音を島に響かせ続けているのだ。

前提の誤り

機能不全ともいえる破綻が複数あること、それが窮屈さを生み出す要因になっている点について触れた。

何故ここまで膨大かつ致命的な問題を抱えたままになっているのかを考えたが、いちプレイヤー視点からはコンセプトレベルでの誤りがあったようにしか思えなかった。

現状では本作のメインコンテンツはレースとなっており、その点については公式でも認めている(Dev Diary [5] にて言及)
また、PvPでレースを行うランクレースが用意されている点からも重心の置き方が見え透いてくる。
シーズンごとのプレイ状況に応じてランクを獲得でき、シーズン終了時のランクに応じてリワードが貰える仕組みになっているのだが、上位ランクのリワードとして限定車両を登場させるなど、運営方針としてもレースにかなり重心を置いている印象を受ける。

ランクの一覧。右に見切れているものがトップのプレイヤーに渡る称号らしい。

ただ、プレイヤーがそれを求めているのか、といえば実際はそうではないように思える。
TDU シリーズの名前を知っている人間であれば、シリーズの新作と聞いて「ひと気のない島でストリートレースを繰り返すだけのゲーム」なんて想像しないだろう。
過去作をプレイしたことがあるなら猶更である。

冒頭でも紹介したように TDU シリーズの特徴は、リゾート地での疑似的なカーライフやその上に成り立つコミュニティにあったように思う。
TDU から TDU 2 へと進化を見知っているプレイヤーからは本作もその延長線上の上に存在しているものだと思われていた。
が、残念なことにその期待は悪い意味で裏切られてしまった。
魅力的な特徴の多くを失い、その上で中途半端にMMOとされた何かで出てきたのだ。

TDU 2 から本作が登場までのおよそ13年半もの間、オープンワールドのドライブゲームも多数リリースされ、進化と淘汰を繰り返してきた。
当時から存在していた Need for Speed シリーズは未だ新作を出し続けているし、The Crew シリーズ、 Forza Horizon シリーズも誕生し、ブランドを確立させている。
つまりは強力な競合タイトルが増えた。

そもそもとしてオープンワールドのドライブゲームは他オープンワールドタイプのゲームより間口が狭い。プレイヤーがある程度自動車の知識を持っている前提でゲームが構築されているからだ。
新作が出ることで全体のユーザー数がその分増えるといったことは考えづらく、否応なしに既存のユーザ層をパイを奪い合うような構図になっていることだろう。
このような状況では独自性や優位性なきタイトルに人は流れてこない。

本作は TDU というタイトルこそ有していたものの、過去作品にあったような魅力を殆ど手放してしまっている。
結果としてゲーム自体が競合作品の公約数的なものとなり、マップやグラフィックを見繕ってもその凡庸さを隠しきれず、この作品を遊ぶ動機付けが極めて薄くなってしまっている。
厳しい事を言ってしまうと、レースを繰り返すだけならば他タイトルの方がある程度はシステム面が成熟しているし、有名ブランドの車を操るだけであればもっと遊びの幅が用意されている作品がある。
よほど外れ値的な感性を持っていない限りは、わざわざ本作を手に取る必要性が存在しないのだ。

現状の方向性はオープンワールドにしては陳腐なものである。
それ故に、ゲーム自体が持っている遊びの幅が少なくなり、プレイヤーに一様なプレイスタイルを押し付けざるを得なくなっている。
数々の問題点のうち、退屈さを助長させている要因の多くは、特徴の薄いゲームにユーザーを縛り付ける手段を持たせようとした際の副産物といえるだろう。

身の丈に合わないオンラインサービス

本作はオンライン専用タイトルであるにもかかわらず、オンラインサービスが不安定なタイトルであった。

リリース直後の不安定さはオンラインタイトルでは珍しくはないものの、アーリーアクセス期間の初日で大多数のプレイヤーが弾かれた事件は、その後の対応も相まって本作の印象を悪化させた要因だろう。
アーリーアクセスからシーズン1にかけて、このオンラインセッションの不安定さは常に付きまとう問題となっていた。

先達ともいえる Forza Horizon 5 でも当初はセッション周りに多くの問題を抱えていた。

Xbox Game Studios 傘下スタジオ開発のファーストタイトルであったにも関わらず、である。
それでもなおプレイ自体は滞りなくできたのは、オープンロビーに放り込まずシングル/オフラインセッションでも進行できるような作りにしていたことにある。

それに比べて、TDUSC の仕組みはプレイヤーにとってはプレイにおける脆弱性そのものであった。
一度セッションが途切れてしまったら、進捗を放棄させられ、即刻タイトルメニューに戻される仕組みになっていたのである。
ツーリングをしていて戻される分にはまだいいだろう。
40分弱かかるレースの途中で戻される、リバリーエディット途中で戻される、といった進捗を吹き飛ばされるようなケースが頻発していたのだ。

この”再接続を試みている間にオフラインへ行こう”とはならない仕組みは何に由来しているのだろうか?

その点について、公式 Dev Diary [5] の Offline/Solo モードに関する言及の中で興味深いコメントがなされていたので、文字起こしを抜粋する。

On the other hand, the third aspect is that we are still in an MMO, and we want to maintain that MMO dimension in free roam and in the hubs.
This means fostering player interactions and continuing to encourage that.
And if we want to do it in the races, of course, we'll have the option to wait for other players. 
It really depends on each player's preferred style of play we need to allow that flexibility in TDU.  
とどのつまり、交流面でのハブとしての役割をMMOライクなシステムが担っているために、その形態の維持へフォーカスした造りをしているようだ。
常に同期をとり続けないといけないという強迫観念じみた形態となっているのも、この影響が強いのだろう。

ただ、皮肉なことに、この造りがプレイヤーの忌避感を煽る形となってしまっているのも事実だ。

そもそもオンラインプレイへの忌避感を覚えるプレイヤーも存在していたのだが、前述のように進捗の破棄を伴うセッションエラー問題をはじめとするオンラインセッションの不安定さも相まって、現状のフォーマットの上では正常なプレイすら難しいと忌避されている側面もあることだろう。

理由は何であれ、本作のオンライン周辺のシステムは適切に運用できているようには見えず、プレイヤーへは足枷以上の機能を提供できていないのが実態だろう。

また、Nacon 公式のパブリッシングゲームリスト [6] や KT Racingの開発した作品のリスト [7] を見ても、本作のようなオンライン形態を持つ作品がなかったことから、そういったノウハウが不足している点も影響しているかもしれない。

開発・運用側は適切にMMOという形態でサービス運用できるという想定があったのだろうが、その想定に幾ばくか誤りがあったのではないだろうか?

そもそもプレイヤーに不利益を被らせてまで本作の形態にこだわる前提自体に誤りがあったのではないだろうか?

...

リリース直後から現在にかけての状況については、ある部分ではオンラインサービスの運用に関する誤謬が招いた結果であろう。

今後、基本的なオンラインセッションの安定化に合わせて、こうした同期中毒ともいえる仕組み自体にもメスが入ることを期待したいところだ。

シーズンの終わり

ゲーム内では今まさにシーズン 1 が終わろうとしているが、その過程は散々たるものであった。
アーリーアクセスでのログイン問題、シーズン 1 のローンチでの失敗、そしてサーバーのリージョンロックと過疎化。
あらゆるミスがリリース当初から重なり続けている。

プレリリース段階での大コケもあり、Steam 版については初動ですら同時接続5000人台に留まった。
そしてリリース後ふた月の段階で多くても同時接続は300人台という状況にある。[8]
(加えて、セールがあったにも関わらず AU 数は殆ど回復していない)
コンシューマー版はPC版よりかは数倍人口が存在していると思われるが、期間イベントのランキングから見るに、同リージョン内のアクティブはどんなに多くても200人台と見られている。

ちなみにこの過疎化自体も面白い深刻な問題を発生させている。

シーズン1でランクレースを繰り返し Solar Court (APEX LEGENDS でいうマスター) に到達できたプレイヤーには限定車両 Pininfarina Battista がプレゼントされることになっていた。

シーズンリワードの Pininfarina Battista

しかし、サーバーがリージョンロックされている状況で急激に過疎化してしまったために、ランク以前にそもそも他プレイヤーとマッチングすらせず、ランクレースをプレイすること自体が最大のハードルと化しているのだ。

PC版ではその結果として、日本が含まれているリージョン内で
  • ランクを有しているプレイヤーがたったの 13 人
  • トップのプレイヤーもシルバー帯
と、目も当てられない状況に陥っている。

日本のプレイヤーが送り込まれるリージョンの様子(PC版)

トップでもこの状況

お笑いなのはここからで、公式のパッチノート [9] にてこの問題についてのコメントが記載されていたのだが・・・

Ranked Matchmaking:

We understand that many of you are facing challenges with ranked races. Our development team is actively seeking a short-term solution to alleviate the situation, and we’re fully committed to finding a more permanent fix that will ensure you get the best possible ranked experience.

We acknowledge that the competitive Solar Crown experience in Season 1 may not be optimal, especially in less populated regions. To improve this, we’re focusing on game design adjustments to better align the ranked system with player behavior and needs. In the meantime, we recommend grouping with other participants before entering ranked events to enhance the experience.

Additionally, we’re aware of concerns regarding cheating, and solutions are already being implemented to tackle this problem.

この中に運営側からしばらくの間の対処方法が提示されている。

In the meantime, we recommend grouping with other participants before entering ranked events to enhance the experience.

公式がそんな談合じみたことを推奨しだしたら終わりでは?

また、シーズン制開始に伴い、本作のバトルパスに相当する Solar Pass が開始された。
特別な経験値を貯めることでレベルが上がり、レベルが1つあがるにつれてリワードが貰え、上限に到達すると特別な車両が貰えるものになっていた。

シーズン1の Solar Pass はレベル 25 が上限で、Audi e-tron GT がリワードに設定されていた・・・のだが、このシステム自体も結果としてこのゲームの粗悪さを際立たせる結果となってしまった。

リワードの中身が悪いだとか、そういった些細な話ではない。
当初 PC 版だけ Solar Pass の項目が表示されず、どのようなリワードが道中にあるのか確認すらできなかったこ不具合もあったが、それも些細な問題である。

まずは有料 DLC である Solar Content Pack の説明画像を見ていただきたい。

Steam のストアページ [10] に掲載されていた画像から抜粋

無料VIP Solar Pass の項目の説明には以下のように書かれている
すでに20レベルまでアンロック済みのシーズンのプレミアム報酬へのアクセス権付き

なんとこの文言の内容はシーズン1では履行されていない。そしてシーズン2でも履行されない。
運営曰く、適用はシーズン3からとのことであったが、予約可能段階でそのような事前説明は見受けられなかった。
これは誤解を招くというレベルを超えて、優良誤認とか有利誤認だとかに絡む内容に思える。

この点についての保障対応等も特には成されていないし、そのまま踏み倒される事だろう。そういうゲームである。


朽ちゆく島にて

本作も 2024/12/11 にシーズン 2 を迎え、新たにイビサ島の中でも都市部とされる一角が新規で追加される。

とはいえ、このゲームの行く末は暗いままだ。なんせ人がいないのだ。
シーズン2開始で一度プレイヤーは戻ってくるかもしれないが、根本的な改善が望めない以上は1~2週間もすればまた元に戻るだろう。
むしろアップデートの内容によって更なる失望と離脱を生みかねない。

先日公開されたシーズン 2 に向けた Dev Diary [11] では今後も改善を続けていく他、批判やフィードバックを受け入れて、正しい方向へとゲームが向くように方針転換もいとわない姿勢を見せていた。



が、ただのカテゴリースワップ車両とステッカーを補償と銘打ったり、ステッカーを張り付けただけの嵩増しを堂々と告知し、既存プレイヤーの神経を逆撫でしているようなチームである。当分の間、プレイヤーはこうした頓珍漢な振る舞いに耐える必要がありそうだ。

もっと言えば、次シーズンでも限定車両をランクリワードに置いており、これでシーズン開幕段階でランクマッチ周りに改善がなされていなければ、本シーズンの二の舞を演じる羽目になりそうである。そもそもとして、こういったリワードを用意しなくてもいいと思うが、その点は黙っておこう。

シーズン3以降のことにもアップデートがあった。
TDUSC はロードマップ上では、2025年3月のシーズン3でクラン同士の対戦機能とおぼしきクランウォーなるもの、2025年6月のシーズン4にはカジノが実装予定としており、長期的な実装目標として不動産やバイクの追加を示唆していた。
が、現状の批判を重く見たのか、シーズン3の内容は延期とし、ゲーム改善にリソースを割く方針を先日発表している。
発表内容を好意的に解釈すれば、イベント周りがテコ入れや報酬システムの見直し等がなされるのではないかと思われる。
シーズン2での改善次第では、このシーズン3の判断への期待度も変わることだろう。

とはいえ、昨今はロードマップの途中で頓挫し、完成形が日の目を見ないままに消えゆく作品も存在する。本作もその一部となるポテンシャルがある。
全く油断ならない、というより何時全てをひっくり返して死の宣告がなされてもおかしくない状況である。

朽ちゆくこの島が持ち直し、プレイヤーが Solar Crown の名のもとにカーライフを楽しめる時はやってくるのだろうか。

参考

QooQ